2023-09-26

髪さけ虫

 「かみさけむし」とひらがな表記もありますが、蛆虫のことです。

昭和の時代の汲み取り式便所でみかけることがありましたが、令和のいまは見ません。


江戸中期の『俚言集覧』(太田全斎著)という国語辞書によると、

「かみさけむし、京にて糞中のうじをいう」

と記述していますので、京だけで使われていた言葉のようです。しかも、蛆虫はたくさんいますが、トイレにいる蛆虫だけを「かみさけむし」といったのかもしれません。


「かみさけむし」、「髪さけ虫」と表わしますが、「神避け虫」(神様が避ける虫)としたほうがふさわしい。実際、江戸後期の『守貞漫稿』には「神さけ虫」の表記があります。


「ちはやふる卯月八日は吉日よ かみさけむしをせいばいそする」

という歌を雪隠に貼っておくのが当時の習俗だったようです。しかも逆さまに貼るのが、さみさけむし退治に効果があったと信じられていました。「かみさけむし」を「かみ逆けむし」と遊んだのかもしれません。


歌にある「卯月八日」はお釈迦様のめでたい誕生日。また南北朝時代、楠正正成が千早城に籠って襲来する敵に糞尿をあびせて退治したことを踏んでいます。


トイレにこの歌を書いて逆さに貼る風習は、京、大坂、江戸の三都にあった、と『守貞漫稿』は書いています。


髪に関わる、小話でした。

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