化粧は、いまメイクアップと同義語で使われています。
化粧はいまは「けしょう」と読みますが、むかしは「けわい」「けそう」と発音、あるいは表記されて使われていました。意味合いも顔を対象にしたメイクアップだけでなく、身体全体の姿、立ち居振る舞い、所作、心の持ち様なども対象に、「美しくする」「正しくする」といった意味合いで使われていました。
『源氏物語』に「心けさう」という表現がみられるので、平安時代には使われていたようです。
江戸時代後期に出版された『都風俗化粧伝』(佐山半七丸)は、「みやこふうぞく けわい でん」とよみます。この本は女性の姿、立ち居振る舞い、それを正すための薬の処方などについて書かれた、いまでいう美容書です。
この本では、「けわい」の一部として主に顔の「化粧之部」(けしょうのぶ)が取り上げられています。厳密に使い分けられているわけではありませんが、「けわい」は美容全体、「けしょう」はいまのメイクアップに近い。
ちなみに『都風俗化粧伝』は、同じ版木で大正時代まで版行された超ロングセラーの美容書です。
明治後期になると、「けわい」は本来の意味から江戸時代の古い化粧法をさし、当時の化粧を「けしょう」とよんだこともあったようですが、いつしか「けわい」は死語になった。
そもそも化粧という字についても、もとは「懸想」「化生」「仮生」「仮粧」などの同音の文字の中から選ばれたのかもしれません。また「けわい」は「けはい」=気配にも通じます。
メイクアップは「make up」で、辞書には「補う」「補修する」とあります。非常にわかりやすい。
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