2023-04-14

マルセルアイロンがパーマネントを普及させた

 『明治事物起源』(石井研堂・著)に「女子の縮髪」と題して、マルセルアイロンを紹介した記事を掲載しています。

同書は「ヘーヤアイロン(俗称こて)」(原文のまま)と書いていますが、マルセルアイロンのことです。

明治20年(1887年)発行の書籍を引いて、英国女子の間で、このマルセルアイロンを使って整髪するのが流行っている、と記述しています。


マルセルアイロンは1872年(明治5年)にフランス人のマルセル・グラトーが発明した整髪器具で、アイロンこてを熱して、その熱で毛髪を一時的にウエーブ状にする器具です。当初はパリの娼婦らがこぞってウエーブヘアにしましたが、徐々に一般の婦女子に広まっていったといわれています。発明から15年後には英国でこのアイロンが広く使われていたのが『明治事物起源』からわかります。


『明治事物起源』は、大正9年(1920年)に東京市の高等女学校の先生が生徒に、髪を縮ませるようなことをしないよう、指導したことが紹介されています。それから10年後の「昭和五、六年頃にはヘーヤアイロンは、各家庭これを備えざる家とてはなきくらゐに、この縮ら髪がはやれり」と書いています。昭和五、六年ごろの状況は、著者の石井研堂さんの私見ですが、家庭でマルセルアイロンによるウエーブヘアをする女性が多くみられたようです。


大正時代から、マルセルアイロンの製造業者は新聞などに大々的に広告を載せ、マルセルアイロンは一般家庭へ普及します。大正時代から昭和にかけて、洋裁学校が急増し、また化粧方法もそれまでの白赤黒を基調にした和化粧から、肌色、目回りを重視した洋化粧へと変遷しています。髪もマルセルアイロンが一般に普及して西洋のファッションに適したウエーブヘアが広まっていきました。


パーマネントウエーブは、大正後期には日本で行われてましたが料金は超高額でした。それが昭和初期に普及しはじめ、さらに昭和10年ごろに舶来品より安価な国産機のパーマネント機が生産され、一気広まっていきました。その背景には、マルセルアイロンでウエーブヘアにするセルフ施術が普及していたことがあげられます。セルフでつくるウエーブより、美容室で行うパーマネントのほうが、持ちがよく、きれいに仕上がるからです。おしゃれ心のある女性は美容室に通いました。


そして昭和10年代後半、時は戦時下、おしゃれ心のある女性は配給品の木炭を隠し持って、電気にかわって木炭を熱源にする木炭パーマをかけに美容室に通ったのです。


<済>


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