2023-01-21

サロ友と昭和の理容店

 リクルートが翌年のキーワードとして、「サロ友」を提案したのは確か2018年末のことだったと思います。

理美容サロンを中心にした絆、友達の輪を大事にしましょう、ということが趣旨だった、と記憶しています。人間関係が希薄なった社会を反映してのキーワードと理解しました。歴史は「韻を踏む」ともいいますが、昭和の時代にもサロンを中心に客が集まっていました。


昭和の時代の理容店の話です。


いまは元気がなくなってしまった理容店ですが、昭和の時代は繁盛している店が多くありました。

理容店によっては経営者の趣味を前面に押し出している店がありました。釣り好き、ゴルフ好き、カラオケ好き、ヨット好き、バイク好き、などなど。話題になったくらいですから、当時としても珍しかったのかもしれません。


釣り好きな店主の理容店ではシーズンごとに店主催の釣り大会を開いていました。ゴルフ好きな店主は店の名前を冠したカップを用意し、店主催のゴルフ大会を催したり、カラオケ好きは店内にカラオケセットを設置して、マイクを持った客が熱唱したり、施術を終えた店主が一曲披露したり。店には釣り好き、ゴルフ好き、カラオケ好きの客が集まって盛り上がっていました。


ヨット好きの店主は40フィート級のクルーザーを所有し、客を招待してクルージングを楽しんでいました。バイク好きの店主は「1010」会というバイク同好会を作ったのはいいのですが、ツーリング中に事故って解散、という事態に。「1010」はしゃれで「転倒」、これがよくなかったと反省しきりでした。


そういえばタイガースファンの店主の理容店では、阪神ファンの集会場といった感じでした。巨人戦があると店からマイクロバスを仕立てて水道橋まで応援に行ってました。国鉄、大洋、中日、広島ファンの客は大歓迎で、当時はこれらのチームは阪神に負けることが強く、いいお客様だったようです。宿敵は巨人です。知らずに店に入った巨人ファンの客は、肩身の狭い思いをしたはずです。


仕事は紛れもなく理容なのですが、店主の趣味と一体化した感がありました。ときには仕事は奥さんと従業員に任せ、趣味を最優先させていた店主もいました。こんな仕事のやり方でも高級外車を乗り回したり、別荘を所有したり、ゴルフ会員権を持っていたりと、そこそこいい暮らしをしていました。もっとも中には税務署から追徴課税され、しおれていた店主もいましたが。


昭和の時代の理容店はそんな一面がありました。


そして、2019年のキーワード「サロ友」。サロンの固定客を増やそうというビジネスの狙いと社会貢献のイメージが感じられます。いま振り返ると、昭和の理容店はビジネスとは無縁の店主の道楽でした。


0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。

薙髪(ちはつ)

 「薙髪」は「ちはつ」といいます。『広辞苑』に掲載されている言葉ですが、令和のいま使う人は一部の僧侶ぐらいで、一般の人はまず使いません。