平安時代から中世にかけて絵画史料に蓬髪の男性が描かれています。牛飼い、牛引きなど動物に関係する仕事をしているようです。
名前が書いてある場合は、〇×丸となっています。「丸」は幼名に使われまる言葉です。千代丸、牛若丸などです。大人になっても、「丸」がついているのは、一人前の大人として認められていないから、といわれています。牛飼い童とも呼ばれます。
平安時代から中世の男性は、髻を結い、冠や烏帽子を被るのが習わしです。しかし、牛飼いの男性は髻も結わず烏帽子もつけていません。伸び放題の蓬髪です。たいていの絵画史料はボサボサですが、頸あたりの長さで、ボサボサのオカッパ頭もありますし、後ろで結んで垂らした髪もあります。
やはり一人前の男とはいえません。
そこで、名前も幼名である「丸」のままなのでしょう。
幼名に使われる「丸」には、魔除け、災いをよける意味合いがあります。幼児の死亡率が高かった当時、魔除けにつながる「丸」をつけて、子供の無事の成長を願ったのです。大人になると、名前を大人の名に変え、髷を結いました。
もともと「丸」には、トイレに使うオマルに由来する言葉といわれています。嫌な臭いを発し不浄なオマルに通じる「丸」ですから、魔物も避けるだろうというわけです。
幼名としては「丸」が広く使われていますが、汚物そのものを名前にすることもあります。
『土佐日記』で知られる紀貫之の幼名は、内教坊の阿古久曽(あこくそ)です。内教坊は母親の出身身分です。つまり、あこクソちゃんになります。クソ名は平安時代より前から平安時代中ごろまで使われていたようで、古代の名前を調べた南方熊楠さんが紹介しています。
屎麻呂(くそまろ)ちゃん、男屎(おぐそ)ちゃん、、、女の子もあります。屎子(くそこ)ちゃん。そのものです。これなら魔物も避ける?
そういえば日本船はマルシップといわれてますが、この船名の「丸」も同義です。オマル船になります。
海難事故が多発した時代には海には魔物が住んでいたと思われていました。糞だらけのオマル船なら魔物も避けるので無事な航海ができる、そう願ったのでしょう。
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