髪結床の客がさまざまなら、髪結もさまざまです。いまのように資格が必要ではない時代、同じ髪結の親方でも玉石混交だったようで、仕事にしくじる髪結を詠んだ川柳があります。
〇乱鬢に成って髪結追回し (明五義4)
結った元結が緩かったようで、髻が緩み側頭部の鬢が乱れてしまった客が怒って、髪結を追いまわしている様を詠んだ川柳です。結ったのは廻り髪結かもしれません。
〇髪結を怖い頭で追い歩き (傍三20)
剃りそこなって頭に傷を負った客は執念深い。
〇上下で髪結叱り付けられる (安五礼1)
裃を着て改まった席にいく客を剃りそこなってしまい、叱りつけられている髪結です。
〇髪結を立派ななりで叱って居 (明三智3)
立派ななり、というからにはどこかの儀式に出かけるのでしょう。その前に寄った髪結床で剃りそこねの目にあった。髪結が叱られるのも仕方ありません。
〇髪結床懲りたかへんえへんなり (天二梅2)
何かしくじったのでしょう。こっぴどく叱り付けられた髪結は、せいへん、せいへんと謝っています。えへんは、上方言葉で「せいへん」のことらしい。
〇剃り下げて二十五文になった髪結銭 (一五六18)
剃りそこなって、値引きすることもあったようです。この川柳は江戸後期に詠まれた句で、当時は32銭が髪結銭の相場でした。
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