『讀賣新聞』(2025年7月16日・東京本社版)の「編集手帳」にて、焼失を免れた「戦時版よみうり」がデジタル化によって復活したことが紹介され、あわせて読者投稿欄の一部が引用されていました。
「濃い化粧をしてモンペもはかず、首飾りをして通勤する女性がいる。女がこの見えを捨てなければ攻勢移転はできない」
これは、化粧を施し、おしゃれをして通勤する女性を批判した内容の投稿です。
「戦時版よみうり」は、1944年(昭和19年)3月1日から1945年(昭和20年)3月31日までの約1年間、戦局が悪化するなかで発行されていました。この読者投稿からも、敗戦が色濃くなっていた戦争末期であっても、化粧やおしゃれを楽しむ女性が実際に存在していたことがうかがえます。
当時は、配給された木炭を隠し持ち、木炭パーマをかけに美容室へ訪れる女性が多くいたとされます。現存する写真には、そうした女性たちが店の前に列を作る様子が写っています。都市部では、戦時下でもおしゃれに余念のない女性が一定数いたことは間違いありません。今回引用された投稿は、そうした姿を見かけた読者によるものと考えられます。
「戦時版よみうり」は、戦意高揚や同調圧力の一翼を担う役割を果たしていたともいえます。「編集手帳」の筆者は、今回そのような歴史的背景をふまえた上で、自省の意味を込めて執筆したと記しています。
当時、おしゃれを楽しむ女性たちは、時代の価値観からすれば「非国民」とみなされたのかもしれません。実際にどの程度の女性がそうした行動をしていたのかは定かではありませんが、多くはなかった可能性もあります。逆説的にいえば、そうした「非国民」な女性たちが多くいれば、戦争の終結はもう少し早まっていたのかもしれません。
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