髪結も人の子です。人並みに休むときもあるし、歳もとります。
〇髪結は切なく成るとうらば入り (明四義9)
うらば、は裏場。町内の裏場には便所あり、髪結が大か小かはわかりませんが、便意、尿意を催すと、裏場に行く、という川柳です。髪結も生理現象に勝てません。
〇髪結は年の寄るほど締りかね (二七23)
髪結も老います。締りかね、は元結をじゅうぶんに締められない。髪結に定年はありません。とはいうものの元結を締めるには力が必要です。元結の一方を歯でくわえるので、歯も丈夫でなければなりません。ぼちぼち隠居の髪結のようです。女髪結も同様で、歯を大事にしたといいます。
別の解釈は、年寄りの髪結は頭が薄くなって自分の元結を締められない。
〇変な日にばかり髪結休むなり (明五松1)
髪結は遊び人が多く、遊び過ぎた翌日はよく休む、という解釈もありそうですが、この川柳は腕のいい髪結は気まぐれで変な日に休む、とも読めます。おそらく後者の解釈でしょう。
〇髪結のくるんで来るは急な用 (明五松3)
髪結は仕事柄、剃りたての月代に髷を決めていますが、急な用事で月代・髷に手をかける時間がなく、出かけるときもあります。そんなときは、頭を手拭でくるむ髪結です。
くるむ、を眯(目編に米)むと読み、重大な緊急の用事のとき、目を細めていきんでやってくる髪結、と解釈することもできます。髪結のなかには見回り同心の下働きをしている者もいて、何か重大な情報をつかんで、同心宅に走ったのかもしれません。時代小説好きが喜びそうな解釈です。
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