『日本結髪全史』(江馬務、創元社、昭和11年/1936)は、日本の髪型に関する通史で、古代から平安、中世、江戸、明治大正昭和までの髪型を多くの図版をまじえて網羅しています。
著者の江馬務さん(京都女子大学名誉教授、1884年-1979年)は、日本の風俗史研究の基礎を築いた一人とされています。有職故実の文献や史料から過去の風俗を考証する一方、衣装などを復原、実際に着用しての考察も行っています。
本著は、
国有風俗時代(古代~)、
韓唐風模倣時代(古墳時代~)、
国風発達時代(平安時代中期~)、
国風全盛時代(戦国時代~)、
和洋混淆時代(明治~大正)、
の5つに時代区分しています。
政治史や権力史と違い風俗は長い年月をかけて徐々に緩やかに変化していくものです。時代区分も、おおよそのものになるのは仕方ありませんが、前述の時代区分は特徴的な変化を踏まえており、的を得たものといえます。
本著の発行は、小欄子の手元にある同著は昭和28年の初版発行本になっていますが、戦前の昭和11年に発行されており、それの追補版とみられます。
日本の髪型史を著した書籍は複数ありますが、この『日本結髪全史』を凌ぐものはないようです。図版が美しく簡便にまとめた『黒髪の文化史』(大原梨恵子、築地書館)や、江戸の髪型に絞って多数の髪型をこれも図版を多用して紹介した『江戸結髪史』(金沢康隆、青蛙書房)など多数あります。
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