2021-07-19

髪亭

 「髪結の亭主」はヒモのことですが、これとは別に「髪亭」という言葉があります。

「髪亭」はヒモではありません。

美容サロン業界のごく限られた人達の間で、昭和の時代に使われた言葉です。


美容師さんと世帯を持った男性は3つのタイプに分類されます。「髪結の亭主」、「髪亭」、そして夫婦共稼ぎです。いまの時代は単なる共稼ぎが多い。昭和の時代は美容師さんと結婚したのはいいけど、サラリーマンの稼ぎより遥かに多く稼ぐのを知って、会社務めが馬鹿らしくなって仕事を辞めてしまう人がいました。彼らを「髪亭」といいます。


髪亭は仕事を辞めたあと、奥さんが経営する美容室の経理や事務をしたり、朝は店の内外を掃除したり、従業員の面倒を見たり、そんな手伝いをしながら、趣味の稽古事に熱中したり、ゴルフや釣りに興じたりと、ある意味悠々自適な生活を楽しんでいる人です。なかには稽古事で世間に知られる存在になった人もいます。


組合の会合に出ているうちに、組合の役員、さらに全国組織の役員になって組合行政を運営する人もいました。

ヒモではないのですが、奥さんに食べさしてもらっている、いい身分の亭主です。昭和の時代のパーマネント全盛のころの話です。


業界団体の宴席で、たまに「髪亭」さんと隣席して話すと、いい身分とはいえ、それなりの苦労はあるようです。「髪亭」さんは「髪亭」仲間があって、どこそこの「髪亭」は浮気がバレてほっぽり出された、なんて話を聞かされたりましす。「髪亭」は浮気が禁物です。


「髪亭」という言葉は昭和の時代の美容業界専門誌のジャーナル仲間でよく使っていた言葉です。ジャーナルの一人に美容業界のレジェンドといわれる美容師さんや髪結さんの評伝を書いている人がいました。その彼に「著名美容師さんもいいけど、髪亭さんを対象に髪亭模様を書いたほうが面白そうだ」なんていう話をしたら、怪訝そうな顔をされた。彼もも髪亭なのを後で知ったのでした。


ところで、「髪亭」に類似した言葉に「逆髪亭」があります。これは、有名美容室の御曹司が店で働くスタッフのうち有能で美形な美容師さんを娶ったケースです。亭主はたいてい美容業界の団体、組織に顔をだしていて、それなりに活躍しています。政治家が有能な婿養子を迎えるのと同じようなものです。

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