理容師の男女比率は、いまは6対4で男性がやや多い。しかし、理容が理髪といわれていたむかし、さらに髪結の大むかしは男性の仕事でした。
むかしは何事にも男女によって区別する意識があり、男性の髪は男の髪結、女性の髪は女髪結が扱うのが決まりごとになっていました。いまでは考えられませんが、これが当時の常識でした。その常識を破ったのが戦争といえます。
理容の仕事に女性が進出したのは、第二次世界大戦で多くの男性理容師が兵士として徴用されたからです。
戦時色が強まる昭和18年3月、40歳未満の男子理容師就業禁止が禁止されました。理容師のほかにも、鉄道の改札係など17業種の男子就業が禁止され、兵隊として戦地へ動員されました。
その穴を埋めるために、女子が動員されたのです。改札係などと違い、技術が必要な理容の場合はすぐに就業はできないので、各地に理容の技術を指導する速修科の養成施設が設けられました。そこで学んだ女子が男性理容師にかわって理容の仕事をしました。速修科の養成施設のうち何校かはいまでも理美容学校として教育事業を行っています。
戦争が終わり戦地から男性理容師が引き上げてきましたが、女性の理容師もそのまま就業しました。戦時下、女性理容師が就業したことで以降、それまでの男性中心の理容業から現在の業容に変化したのです。
国民を総動員する世界大戦は世の中を変えるといいますが、その一例といえます。
ちなみに、第一次世界大戦では、男性の髭剃りの習慣、女性のショートヘア化の現象が起こりました。髭剃りはガスマスク着用する際、髭があっては外気が入り込んで効果がなくなるからです。女性のショートヘア化はロングヘアでは工場での作業に支障をしたしたり、危険がともなったからです。
髭剃りの習慣にしろ、ショート化にしろ、その背景には使い捨ての安全カミソリの開発、ウエーブをつけやすいマルセルアイロンの普及などがあったのですが、戦争が後押しして、ひろく行われるようになりました。
女性理容師の増加の背景には、女性の社会進出、安定した収入が見込める仕事への就労を希望する女性が多くなりつつあった時代背景があったものと思われます。
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