「髪は神に通じる」といい、霊験あらたかなものに通じますが、例外もあります。
江戸時代、「かみさけむし」という虫がいました。「神さけむし」「髪さけむし」とも書きます。かみさけむし、蛆虫(うじむし)のことです。
蛆虫といえば、平成生まれの人には縁がないでしょうが、昭和30年代ごろまでの水洗になるまえのトイレにいました。そのころのトイレを「ボットン便所」といってましたが、いまとなっては懐かしい。江戸時代も同じです。トイレの便壺には蛆虫がうごめいていました。
かみさけむし、神避け虫、神様も避ける穢れた虫、からきているのかもしれませんが、語源の由来は不明です。
千早振る卯月八日は吉日よ 神さけ虫の成敗ぞする
という戯れ歌があります。卯月八日、4月8日はお釈迦様が生まれた灌仏会(かんぶつえ)で、花祭りとして甘茶を仏像にかけるのが習わしです。
そんな吉日に、かみさけ虫を成敗するために江戸の庶民は、厠に前述の戯れ歌を書いて貼りました。しかも逆さまにして。
壁に貼る 四月八日はお逆(さか)さま (『誹風柳多留』 153篇15丁)
4月8日は灌仏会のめでたい日です。江戸の庶民は、お釈迦様を「お逆さま」と読んで、戯れ歌を逆さまにして貼ったのです。言葉遊びが好きな江戸の庶民のやりそうなことです。
神様もお釈迦様も言葉遊びのネタにしてしまう江戸の庶民でした。
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