2023-06-28

戦前の理髪師結髪美容師実技試験

 いま厚生労働省の「美容師の養成のあり方に関する検討会」で、美容師試験の実技試験の課題が検討されています。

美容師試験の実技試験が全国統一されたのは、平成10年の新制度になってからです。それまでは各都道府県が行っていました。免許も大臣免許ではなく知事免許でした。

実技試験が行われるようになったのは戦後のことです。


それまでは第一種試験、第二種試験、第三種試験の三つの実技試験があり、美容師は第二種試験と第三種試験に合格する必要がありました。

試験の内容は、

第一種試験は、理髪師(理容師)が対象で、「頭髪、鬚髯の剪剃、染毛」

第二種試験は、髪結・美容師が対象で、「結髪、癖毛直し、染毛」

第三種試験は、理髪師と美容師が対象で、「美顔術」

となっています。

これは東京府の第一回目(昭和5年/1930年)の試験です。


実施官庁は警視庁です。戦前の警視庁は当時の内務省に直結した組織で、他の府県も東京に倣うことが多かった。ただし試験そのものは大阪府が一足早く実施ています。理髪師試験は大正8年(1919)、女子結髪試験は大正12年(1923)に実施しています。


第一種から第三種までは実技の試験といっても実際の実技ではなく、これらの科目の筆記試験、口述試験の形式で行われました。


東京府の試験では、実技の試験のほか学科試験として、

①生理・衛生及び伝染病疾病の大意

②消毒方法

③用剤材料の大要

④関係法令

が行われました。


理髪師結髪美容師の試験は第一種から三種までの実技より、この学科試験に試験に重点が置かれ実施されました。そして、この学科試験は非常に難しく、第一回試験の合格者は1割台だったといわれてます。


理髪師髪結美容師の試験が実施された背景には、同時期に結核予防法(1919年)、トラホーム予防法(同)などが制定され、伝染性の疾患に対する防疫意識が高まったことがありますが、業者側としても試験によって業者の乱立を避けたい思惑がありました。


試験はすべての府道県が実施したわけではなく、実施しない道県もありました。これらの道県では、組合組織が強く、組合による出店規制、料金協定があり、試験を行う必要性がなかったからと推察できます。


戦後、昭和22年に理容師法が制定され、はじめて理容師美容師の実技試験が行われるようになります(原初、理容師法は美容師も抱合した法律でした)。

そして、全国統一で実施されるようになった平成10年以降、何度か実技試験の課題は変更されています。


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