2022-08-28

小枕 17世紀後半には使われていた

 金紙七髷結(きんがみはねもとゆい)より

『好色一代女』のこの章では髪がテーマになっています。

御梳(おかんあげ)として、さる屋敷に奉公に上がった一代女ですが、奉公先の夫人は髪の毛が少なく、このことを言外するなと誓約させられ、さらには豊かなの髪の一代女を嫉んで無理をいってきます。


一代女は耐えきれず、報復する決意をします。気が強い一代女です。飼い猫を夫人のかもじ(入れ髪)にじゃれつかせるよう仕込んで、殿のまえで決行します。


…あるとき、雨の淋しく、女まじりに、殿も宵より。御機嫌よろしく、琴のつまびき、あそばれしける時。彼の猫を、仕かけけるに。何の用捨もなく、奥さまのおぐしに、かきつき。かんざし、こまくら、おとせば、五年の恋、興覚まし。…


一代女は、何の躊躇もなく、決行します。

夫人の髪はほどけ、かんざしはい落ち、髪のなかに仕込んだこまくら(小枕)も落ちて、髪の薄いのが殿にばれてしまう。興ざめする殿でした。


この一文で、注目したのは小枕をすでに使っていたことです。小枕は根の部分に置いて毛束で包んで固定し使用しますが、小枕を入れることで髻はしっかりし、髪に十分なボリュームを与えます。


小枕を使用するのは島田髷系にしろ丸髷系にしろ日本髪が派手になった18世紀になってからと思っていたのですが、この一文から17世紀後半にはすでに使用されていたのがわかります。上方は江戸時代の中ごろまで文化の先進地で、江戸より早く装飾性の高い髪が結われていたようです。


女髪結の出現も上方のほかが早く、江戸は四半世紀遅れて現れれます。『好色一代女』が書かれた当時、江戸で小枕が使われていたかは微妙です。


ところで、興ざめした殿と一代女は、、、想像にお任せします。

『好色一代女』金紙七髷結は、これにて終わりです。


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