2022-04-05

「柴垣理容院」と麻布「吉床」、どちらが最古?

 『読売新聞』神奈川版(2022年4月2日付)に日本最古の理髪店として、横浜市中区初音町の「柴垣理容院」が紹介されていました。


1869年(明治2年)、髪結床をしていた初代が横浜で開業。戦後GHQの立ち退き命令で現在地(浜市中区初音町)に移転したと伝えています。現在の店主・柴垣真太郎さんは5代目だそうです。

この「柴垣理容院」が日本最古で、「ここより古い現存店は日本にはない」と神奈川県理容組合のコメントも紹介していますが、日本最古や日本初に関しては諸説あるものです。


日本で初めて西洋式の理容店を開業したのは1868年(明治元年)に横浜148番地に開業した小倉虎吉さんといわれていますが、現存していません。現存店では「柴垣理容院」が古そうですが、断定はできません。


東京・麻布にある「I.B.KAN」という理容店は、1818年の創業といわれています。現在の経営者、西原道雄さんは7代目です。初代は、蔦屋吉五郎といい、屋号は「吉床」でした。7代目は初代の「蔦」から英語のIVY(蔦)にちなんだ店名にしたそうです。


6代目の西原二郎さん(全理連講師会理事長/現・全理連中央講師会幹事長)の著書『かみひとすじ』によると、麻布善福寺の米国公使館に赴任した初代駐日公司、タウンゼント・ハリス(写真)の髭を剃ったのが、吉床の3代目、4代目といいます。公使館は吉床の前にあり、ハリスが着任したのは1859年(安政6年)のことです。


最初は髭を剃っていただけでしたが、馬車に乗って横浜まで一日かかりで西洋理髪を学びにいかされた、といいますから、おそらく髭剃りだけでなく髪のカットも行ったのでしょう。ハリスは1862年(文久2年)に帰国しているので、在任中に吉床の3代目、4代目がハリスの髪をカットした可能性は高そうですが、確証はありません。


ハリスは、滞在日記をつけているので、確認しようと思ったのですが、善福寺に着任後の日記は不明とされています。もし日記が世に出ることがあれば、吉床の3代目、4代目がハリスの髪をカットしたか、判明するかもしれません。


「I.B.KAN」は、江戸の時代から現在まで、同地で髪結、理容を営んでいます。7代目は「出世するやつも夜逃げするやつもいなかった」と地域情報『ザ・AZABU』にジョーク混じりに語っています。


日本初、日本最古は、そう簡単には判定できませんが、タイトルで「日本最古の理髪店といえばココ」(WEB版)と言い切ってしまう読売新聞でした。

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 「ヒゲを剃る」ことを「ヒゲを当たる」ともいいます。