2022-06-24

髪結・女髪結 共稼ぎ

 〇文七とお六は髪の共稼ぎ (五四3)

文七は文七元結のことで、丁髷の髻や日本髪の根を結う。お六櫛は角丸形のつげ櫛で、梳き櫛として女性が愛用したといいます。

文七元結は、文七さんという元結職人が、水のりを含ませた紙を扱いで作ったという説がありますが、ひねった元結の総称という説や、その元結を作る職人の総称という説もあります。お六櫛は、木曽街道・藪原近くに住んでいたお六という娘に由来している、という説が有力です。いづれも江戸時代に作られ流行った道具です。

その髪道具を男女に見立て、男女共働きを詠んだ川柳と解釈できます。


髪結、髪結床というと男の世界で、女性とは無縁なイメージです。しかし、実際は髪結の女房が見世で髪結仕事の手伝いをすることがあったようです。髪結床は、小僧、中立(職人)、親方の三人立ちといって、3人で仕事を分担して行うことが多かったのですが、小僧、中立の使用人が急病などで休むこともあります。そんなとき髪結の女房が手伝いをすることは十分考えられます。また天保の改革では、「髪結渡世女手伝下剃禁止」の触れが出されています。触れが出されるほどですから、女手伝いが目立つ存在だったのでしょう。女手伝いのなかには髪結の女房もいたはずです。


この川柳は、俳風柳多留・54編に収録された句ですが、板行された時代は文化文政のころと思われます。この時代には女髪結が江戸市中で活躍していました。この川柳の共稼ぎは亭主・髪結、女房・女髪結の可能性も否定できません。だとしたら、「よく稼ぐ」の意味合いが強く、やっかみ半分の川柳として理解できます。


0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。

ヒゲを当たる

 「ヒゲを剃る」ことを「ヒゲを当たる」ともいいます。